夏  草

夏草と言えば芭蕉を思う また立原正秋も思い浮く 夏草は ほどよく離れて 見るのがもっとも生きる 近すぎると息苦しく思う 離れすぎると雑景になる 涼しむ山道の草となりは 透き通るほどに凜となる 朝の農園はすがすがしく フィラデルフィア染色体 あがいていても静かなり 夏草の凜々しきに乱れず 青空も白雲も透きる風も 揺れている木々の青葉も …

続きを読む

冬  草

薄明かりの中で薄がゆれている その夕べは風のない静かな岸辺 やはりここは金流川のほとりだ 幼き日に兄等と釣りをした川だ 兄が釣りに行くよと呼んでいる 朝起きると真っ白な雪道が続く その雪道を野ウサギと狐が歩く やはりここは僕たちの原っぱだ 幼い日に兄と朝が晩まで遊んだ あの兄が遊ぼうとわたしを呼ぶ 寂しい時も悲しい時も一緒いた 腹減る時も満ちる時も一緒いた 新聞配達も…

続きを読む

夢  花

旅ゆく日も 仕事の日も 待ち続ける花が あるとするならば 太陽と月を頼りに 映える面影へ 話しかていたい 雨降る日も 風吹く日も 咲き続ける花が あるとするならば そのたび毎に お洒落して 会いに行きたい 陽が沈む夕方も 陽が昇る朝方も 寄り添い続ける花が あるとするならば 腕まくらをして 優しく抱きしめて 夢路の花としたい

続きを読む

星  影

いろいろあった今日が過ぎていく 遠い処からのたよりを待ちながら 今日という日が段々と離れていく 明日は今日とは違う時空を流れる 語り尽くせないことを残したまま 沈むゆく太陽にさようならと言う 段々とわたしの影が伸びていく 果たしてどこまで伸びるのかと その天辺を竹の棒で衝いてみる かぼそい音とともに折れそうな その影はもう精一杯な気がして 「休んでいいよ」と言いたくなる…

続きを読む

立  葵

白雲の流れさえも一緒に 青空は地球を抱えている 立葵の種を 蒔いたのは 一ヶ月ほど前の晴天の日 苗が掌ほどになってきた 明日は雨と予報が流れる 南を仰ぐ土手に植える際 不覚にも後方に転倒する その場にしばしうずくむ 痛みが遠ざかると周りは すっかりと闇の中にある 「だいじようぶ?]との声 見回したが 誰もいない 烏骨鶏達の吾を呼ぶ声で はっと蘇ると明るくな…

続きを読む

雨  恵

雨の中 薔薇の花が 微笑む 雨の中 かっぱ姿の長靴が 畑へ向かう 雨の中 山道の野蕗が 傘をもつ 雨の中 紫飾のメークインと すれ違う 雨の中 キューイーの枝が 蕾を膨らませる 雨の中 イチゴの葉が 実を見せる 雨の中 ミニトマトの蔓が 風と光を呼ぶ やがて 雲が晴れて 雨が上がって 青空が広がり 皆が笑う

続きを読む